近所で古本市があるというので出掛けてみることにした。サングラスをして自転車に乗って。行ってみると、会場は新聞配達所のガレージで、実にこぢんまりとしている。
 折りたたみ式のテーブルや段ボールなどで作られた棚に、でこぼこと本が並べられている。本は文庫本、特に翻訳ミステリーが多かったが、それらの背表紙をじぃぃっと目で追う者たちの動きは少なく、それよりも断然売れ行きの良さそうだったのは絵本だった。十数分のあいだに、半分に減り、また半分に減り。子どもと一緒に来た母親がどんどん買っていくのだ。ひとからひとへ、本が旅をするのだなと思うとき、それが絵本だとなおさら、それがなにかあたたかなもののような気持ちがする。
 何も買わずに後にした。
 詩集なんかがひょいと出てたりしないかしらと、期待せずに行ったのだが、やっぱりなくて、やっぱり残念。
 

 そのまま図書館に行き、六冊返却して六冊借りた。そして、いつも結果的にひやかし客になってしまう雑貨屋に立ち寄り、結果的にやはりひやかし客となって出た。
 自転車に再び乗った。その時、盛大に駄々をこねる子どもを見かけた。小学一年くらいか。泣いて、ひどく怒っている。一方で家族はみな平静で、のんびりと帰り支度をしており、騒いでいるのはその男の子だけである。ずだずだと地団駄を踏み、何かを泣き怒りしながら言い、またずだずだと地団駄を踏み、父親の車のドアをたたき。そしてしまいに「バカ!」と叫んで、そこで、わたしは吹き出してしまった。