西の魔女が死んだ (新潮文庫) 河合隼雄さんが「思春期の少女の心理がよく描けている」と何処か(書名を失念)で紹介しておられたので、それで読んでみました。児童文学を私は好きなのですが、手に取るのは翻訳物がほとんど。日本産のものを読むのは、あまりないことなのでした。
 これは面白かった。

 少し変わっている本だな、という感想が一番最初でしょうか。宗教書のような感もあります。思想書と呼ぶのもおかしくないですね。ジャンルは、うーん、やっぱり児童文学でしょうねぇ。しかし、そう言い切ってしまうのも、枠が狭いような気がして、微かではありますが、違和感があるかなぁ。

 この本は、きっと様々な読み方をされていると思います。身近な人を亡くしたばかりの人は、その悲しみを少し癒せる、ということもあるかもしれません。自らが死への恐怖から目をそらせなくなっている人には、少し心を軽くさせるようなことが書いてある、かもしれません。また、生きていくうえでの、指針となるような考え・言葉に、出会うという人もいたのではないかな。それ程に重いものではなく、素敵なライフスタイルだなぁなんていう感想の人もいるでしょう。また、自然のすばらしさや、古き良き時代の人々の知恵なんていうことを考えた人もいたかな。それとも、主人公の少女まいの母親が、まいのおばあちゃん・<西の魔女>に対して反発をも抱くように、読んで「ケッ」なんて言って、白けてしまうという人もいるでしょうね。また、まいの父親のように、よくわからないなぁと感じたまま、距離を保つという人もいるでしょう。
 ちょっと変わっている本です。私は変わっていると感じました。
 詳しい内容については触れません。興味をお持ちになった方は amazon へのリンクをはっていますので、そちらへどうぞ。上の画像からも行けます。(→ 梨木香歩 『西の魔女が死んだ』

 私の場合は、面白く読みました。思春期の少女まいの姿が、私自身の姿と重なったり、それとも、<西の魔女>の言動が、これは bkntmrg のものだな、と思わされたり。私の心のなかには、まいも<西の魔女>も、どちらも存在しているような気がしてしまいました。

 これは本筋とは少し離れた感想ですが。
 「扱いにくい子」と言われて傷ついたまいには、その先も幾度も傷つき続けてしまう前に、ちゃんと掬いあげてくれた人がいたんだなぁ、いいなぁ。……なんてことを思ったり。(「扱いにくい子」と言われて傷ついたことはないのですが、同じようなことで、かなしい思いを、よくしてしまう私なのです。)
 「いつも自信に満ちている」と面と向かって評されてしまったとき、<西の魔女>は、きっと孤独やさみしさをなんかも、感じただろうなぁ。……ということを思ったり。

 設定や展開が、ちょっとうまく出来すぎではないか、そんなふうに思わせてしまうところはあって、それがこの作品の隙であろうなとは思うのですが、でも、私は読んで良かったです。私には面白かった。
 「何でも自分で決めること」「生活の基本を大事にして、精神を鍛えること」「外部からの刺激に動揺しないこと」などなどなど。私自身が心に持っていた指針の幾つかを、再度、思い出させた本でした。