2007年09月27日(木)
梨木香歩『西の魔女が死んだ』
河合隼雄さんが「思春期の少女の心理がよく描けている」と何処か(書名を失念)で紹介しておられたので、それで読んでみました。児童文学を私は好きなのですが、手に取るのは翻訳物がほとんど。日本産のものを読むのは、あまりないことなのでした。
これは面白かった。
少し変わっている本だな、という感想が一番最初でしょうか。宗教書のような感もあります。思想書と呼ぶのもおかしくないですね。ジャンルは、うーん、やっぱり児童文学でしょうねぇ。しかし、そう言い切ってしまうのも、枠が狭いような気がして、微かではありますが、違和感があるかなぁ。
この本は、きっと様々な読み方をされていると思います。身近な人を亡くしたばかりの人は、その悲しみを少し癒せる、ということもあるかもしれません。自らが死への恐怖から目をそらせなくなっている人には、少し心を軽くさせるようなことが書いてある、かもしれません。また、生きていくうえでの、指針となるような考え・言葉に、出会うという人もいたのではないかな。それ程に重いものではなく、素敵なライフスタイルだなぁなんていう感想の人もいるでしょう。また、自然のすばらしさや、古き良き時代の人々の知恵なんていうことを考えた人もいたかな。それとも、主人公の少女まいの母親が、まいのおばあちゃん・<西の魔女>に対して反発をも抱くように、読んで「ケッ」なんて言って、白けてしまうという人もいるでしょうね。また、まいの父親のように、よくわからないなぁと感じたまま、距離を保つという人もいるでしょう。
ちょっと変わっている本です。私は変わっていると感じました。
詳しい内容については触れません。興味をお持ちになった方は amazon へのリンクをはっていますので、そちらへどうぞ。上の画像からも行けます。(→ 梨木香歩 『西の魔女が死んだ』)
私の場合は、面白く読みました。思春期の少女まいの姿が、私自身の姿と重なったり、それとも、<西の魔女>の言動が、これは bkntmrg のものだな、と思わされたり。私の心のなかには、まいも<西の魔女>も、どちらも存在しているような気がしてしまいました。
これは本筋とは少し離れた感想ですが。
「扱いにくい子」と言われて傷ついたまいには、その先も幾度も傷つき続けてしまう前に、ちゃんと掬いあげてくれた人がいたんだなぁ、いいなぁ。……なんてことを思ったり。(「扱いにくい子」と言われて傷ついたことはないのですが、同じようなことで、かなしい思いを、よくしてしまう私なのです。)
「いつも自信に満ちている」と面と向かって評されてしまったとき、<西の魔女>は、きっと孤独やさみしさをなんかも、感じただろうなぁ。……ということを思ったり。
設定や展開が、ちょっとうまく出来すぎではないか、そんなふうに思わせてしまうところはあって、それがこの作品の隙であろうなとは思うのですが、でも、私は読んで良かったです。私には面白かった。
「何でも自分で決めること」「生活の基本を大事にして、精神を鍛えること」「外部からの刺激に動揺しないこと」などなどなど。私自身が心に持っていた指針の幾つかを、再度、思い出させた本でした。
Haru on 2007年09月27日 at 23:09 #
実は大学時代、児童文学を専攻していました。
もともと、宮沢賢治が大好きだったので、その道を選んだのですが、その頃はいろいろ読みましたが、今は時間もなく全く…です。
その時の指導教官が「児童文学は大衆文学である」と言っていたのが印象に残っています。
「子どもが読んで面白いだけではダメで、大人が読んで面白くないと、本物じゃない」という意味でしょうか。
でも、本質を突いていると思います。
ご紹介の本、是非読んでみたいと思いました。
そう、思ってしまう書評でした。
ずっと「変な奴」で、いまでも「いじめられっ子」の僕が読んでも、きっと面白いでしょうね。
よろしければ、ここから購入して読みたいと思います。
感想を書く元気がでれば、TBしますね。
それでは。
bkntmrg on 2007年09月29日 at 21:09 #
そうでしたね、Haruさん、児童文学を専攻なさったのでしたよね。
大人向け(という表現はおかしいような気がしますが)の小説よりも、
児童文学のほうが、詩の領域に近いという気がします。
だから、かなぁ。わたしが好きなのは。
児童文学は好きです。
六、七年前までは、大人向けの小説をよく読みましたが、
それから約二年、読書をまるでしない期間に突入して、その後から、ですね。
読書をまたするようになった時からです。児童文学を読み始めたのは。
四年くらい前からです。
でも最近は、絵本を読みたいなぁと。
より低年齢向けへと、心が傾いていっています。
児童文学もいいんですけどね。大人向けの小説だって、
探せば良いものがたくさんあるだろうなぁと思うのですけどもね。
わたしは目があまり強くないので、字をたくさん読むのがしんどいというか。
だから、絵本くらいがいいなぁ。
といいつつ、一番最近の他の読書は、
まるきり大人向けの、長編のノンフィクション。
ちなみに、井田真木子さんの『十四歳』という本です。
これは良かった。良い本でした。内容は重いですが。
気が向いたら、この本についてもこの場所で書きたいのですが……。
「西の魔女が死んだ」ですが、どうでしょうね。
Haruさんのお気に召すでしょうか。
そうだったらいいなぁと思います。
そう長いお話ではないので、一、二時間で読めると思います。
お忙しいHaruさんに、そう負担は与えない本だと思いますよ。
少なくともわたしにとっては、読みやすい本でした。
よろしかったら、読んでみてくださいね。
ところで、Haruさん。きっと、お体の調子が上向きなのでしょう?
でも、焦ったりなさらないようにね。
トラックバックして頂いたら、わたしはうれしいですが、
別に本もこの場所も、逃げていきませんので。
長文のお返事で、失礼しました。コメントをありがとうございました。
空 瓶 通 信 on 2008年07月11日 at 00:14 #
映画『西の魔女が死んだ』を観ました
(原作を読んだ感想 → 空 瓶 通 信 » 梨木香歩『西の魔女が死んだ』)
先月末に、映画『西の魔女が死んだ』を観てきました。
原作を読んでいましたので、わたしにとっては何一…